こんにちは。9月に入り、朝晩はいくらか過ごしやすくなってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
先週は令和8年分の年末調整で変わる点をご案内いたしましたが、今回はもう一つ、「年末調整手続の電子化」についてお伝えします。毎年12月、集めた申告書の控除額を検算し、控除証明書のハガキを1枚ずつ突き合わせる。この作業に何日も取られている総務のご担当者は少なくありません。国税庁は、電子化の初年度は年末調整の時期のおおむね2か月前までに従業員へ周知したほうがよいとしています。今年から始めるなら、まさに今が検討の時期です。
1. 年末調整の電子化とは何か
これまでの年末調整は、従業員の方が控除証明書等をハガキ等で受け取り、その内容を申告書に転記して控除額を計算し、申告書と証明書を勤務先に提出、勤務先が控除額を検算して年税額を計算する、という流れでした。
電子化すると、従業員の方が控除証明書等を電子データで受け取り、年調ソフトに読み込ませて申告書データを作成し、勤務先がそれを給与システム等に取り込んで年税額を計算する形になります。転記も控除額の計算も、ソフトが行います。
「年調ソフト」は、正式には年末調整控除申告書作成用ソフトウェアといい、国税庁が無償で提供しています。同じ仕組みを取り込んだ民間のソフトでも申告書データは作成できます。
2. 全部を一度に電子化しなくてもかまいません
「うちの規模では無理では」という方に、先にお伝えしたい点が2つあります。
1つは、電子化は義務ではないことです。国税庁も、必ずしもデータで提供しなければならないわけではなく、従前どおり書面で提出しても差し支えないとしています。ITに不慣れな従業員の方だけ紙のまま、という運用も可能です。
もう1つは、部分的な対応でも効果があることです。国税庁は紙とデータの組み合わせで4つのパターンを示し、部分的な対応でも一定の効率化を図ることができるとしています。控除証明書はハガキのままでも、申告書をソフトで作成してもらうだけで控除額の検算は不要になります。
3. 勤務先と従業員、それぞれのメリット
勤務先は、ソフトが自動計算した控除額の検算が不要になり、控除証明書等データを利用した場合は添付書類等の確認事務も削減されます。記載誤りが減るため問合せも減り、書面の保管コストも下がります。
従業員は、手書きでの記入や控除額の計算を省略でき、証明書を紛失した際の再発行依頼も不要になります。マイナポータル連携を使えば、複数の控除証明書等を一度にまとめて取得できます。
4. 始めるために必要な準備
勤務先側の準備は、①実施方法の検討、②従業員への周知、③給与システム等の改修等、の3つです。このうち見落とされやすいのが3つ目で、年税額の計算までデータで行うには給与システム等が申告書データの取込みに対応している必要があります。まずは開発業者等にご確認ください。
あわせて、データで提供を受けるために次の2つの措置を講じる必要があります。
- 提供を受ける方法を定めておく:メール等での送信、USBメモリ等での提出、社内LANの共有領域への保存などから選びます。メールやUSBメモリによる場合は、データに電子署名を付すかパスワードを設定する必要があります
- 本人からの提出だと確認できるようにしておく:従業員の電子署名と電子証明書によるほか、勤務先が通知したID・パスワードで送信してもらう方法でも差し支えありません
従業員側の準備は、年調ソフト等の取得と控除証明書等データの取得です。後者はマイナポータル連携を使えば個別の取得が不要になりますが、連携には事前準備が必要で、発行主体によっては数日かかる場合があります。契約先が連携に対応していることも前提です。冒頭の「2か月前までに周知」は、この準備期間を見込んだものです。
5. 令和8年分の年調ソフトは10月に公開予定です
令和8年分の年調ソフトは、令和8年8月7日にWindows版・macOS版のプロトタイプが公開されています。ただし動作確認用で、仕様が今後変更される可能性がある旨が案内されています。正式版は令和8年10月に公開予定ですので、本格的な運用テストは公開後になさるのが安全です。あわせて操作マニュアルやFAQも更新される見込みですので、運用の際はその時点の最新版をご確認ください。なお、年調ソフトのヘルプデスクも開設されています。
よくある質問
Q. 税務署への申請は必要ですか
不要です。かつては「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を事前に提出して承認を受ける必要がありましたが、令和3年4月1日以後にデータで年末調整申告書を受領する場合は、申請が不要となりました。ただし、前項の2つの措置は引き続き必要です。
Q. 従業員の同意は必要ですか
年末調整関係書類をデータで提供させるにあたり、事前に承諾等を受けておく必要はありません。なお、これとは別に源泉徴収票や給与明細をデータで交付する場合には事前の承諾が必要とされていますので、混同なさらないようご注意ください。
Q. 控除証明書が一部だけ書面で届いた場合はどうなりますか
すべてがデータで揃わなくても、申告書をデータで提供できます。データで取得したものは年調ソフト等に読み込み、書面で届いたものは手入力したうえで、その書面を別途提出または提示していただく形になります。なお、書面の証明書をスキャンしたデータは原本としては提供できません。
詳しく知りたい方は(国税庁公式リソース)
- 年末調整手続の電子化に向けた取組について (年調ソフトの入手先、最新のお知らせ)
- 年末調整手続の電子化の概要・メリット
- 年末調整手続の電子化へ向けた準備
- 年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ) (PDF・令和7年10月改訂版。本記事の実務的な論点の出典)
- 年末調整手続の電子化に関するパンフレット (勤務先編・従業員編・従業員向け周知資料)
- マイナポータル連携特設ページ
本記事は令和8年(2026年)9月7日時点の国税庁ホームページの記載に基づいています。実務的な取扱いについては上記FAQ(令和7年10月改訂版)を参照しており、令和8年分に向けた改訂で内容が変わる可能性があります。
出典:国税庁ホームページ(上記各ページ)
最後に
電子化は初年度こそ手間がかかりますが、翌年以降は毎年その分が楽になります。電子化すると年末調整の事務がどう変わるか、令和8年分の改正内容とあわせて、どうぞお気軽にご相談ください。