こんにちは。日中は汗ばむほどの日もまだございますが、朝晩はめっきり涼しくなってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
11月に入ると、年末調整の書類を従業員の皆様に配り、回収する時期を迎えます。そのとき毎年のように聞かれるのが「扶養控除等申告書は去年と同じ内容なのに、また全部書かないといけないのですか」というご質問です。
実は、前年に提出した内容から変わりがなければ、記載を大幅に省いた「簡易な申告書」で提出できる仕組みがあります。今回は、年末調整とあわせて回収する令和9年分(2027年分)の扶養控除等申告書について、この簡易な申告書の使い方と注意点をご案内いたします。
1. 年末調整の時期に回収する申告書
令和8年分の年末調整の時期に、従業員の方から提出してもらう主な申告書は次のとおりです。
- 令和8年分 保険料控除申告書:生命保険料や地震保険料などの控除を受けるためのもの
- 令和8年分 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書:基礎控除や配偶者控除などを受けるためのもの
- 令和9年分 扶養控除等(異動)申告書:来年の毎月の給与から差し引く源泉所得税の計算に使うもの
扶養控除等申告書だけは「来年分」である点にご注意ください。本来の提出期限は、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日です。実務では、年末調整の書類とあわせて年内に回収する会社が多く見られます。今回ご紹介する簡易な申告書は、この扶養控除等申告書で使えるものです。
2. 簡易な申告書とは
扶養控除等申告書に書くべき事項が、前年に同じ勤務先へ提出した扶養控除等申告書の内容から異動がない(変わっていない)場合には、各項目を書く代わりに「異動がない旨」を書いて提出できます。これを「簡易な申告書」といいます。
書き方は、提出する本人の氏名、住所(または居所)、マイナンバーを書いたうえで、前年から異動がない旨を余白などに記載するだけです。国税庁は、簡易な申告書用の様式(簡易対応様式)と記載例も公開しています。なお、勤務先が従業員等のマイナンバーなど所定の事項を記載した帳簿を備えている場合は、マイナンバーの記載を省略できます。
3. 簡易な申告書を使えない場合
「異動がない」とは、書くべき事項のすべてが前年と同じであることをいいます。次のような場合は異動があったことになり、簡易な申告書は使えません。
- 前年は書いていなかった家族を、今年新たに申告書に書く場合
- 前年は書いていた家族が、今年は対象にならない場合
- 扶養しているお子様が16歳・19歳・23歳に達する、親御様が70歳に達するなど、年齢によって区分が変わる場合
- 障害者だった方が特別障害者になる(またはその逆)場合
一方で、家族の所得の見積額が少し変わっただけの場合は、前年・今年ともに一定の範囲内(例えば控除対象扶養親族なら所得の見積額62万円以下)に収まっていれば、異動がないものとして扱って差し支えないとされています。
令和8年度税制改正では、扶養親族等の所得要件が引き上げられています( 令和8年分の年末調整の改正点 でご紹介しました)。この改正によって申告書に書く家族が増える・減るといった場合は、通常の書き方で提出していただくのが確実です。
4. 勤務先側で気をつけたいこと
簡易な申告書を受け取った勤務先は、前年に受け取った扶養控除等申告書の内容が書かれているものとして源泉徴収を行います。何年も続けて簡易な申告書を受け取った場合でも、最後に受け取った「簡易ではない」申告書の内容を確認できるよう、書面やシステムで管理しておく必要があります。
従業員の方に異動の有無を確認してもらう方法として、国税庁は、前年の申告書の写しを渡す方法や、システム上で前年の申告データを見てもらう方法を例に挙げています。また、年の途中で家族の状況が変わったときは、そのつど異動申告書を提出してもらうことになります。
簡易な申告書は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間の保存が必要です。
よくある質問
Q. 従業員から年末調整の書き方を聞かれても、答えられる自信がありません
国税庁の税務相談チャットボット(ふたば)が、令和8年10月から令和8年分の年末調整の相談に対応しています。メニューから選ぶか、話し言葉やキーワードで入力すると、AIが一般的な内容を回答します。スマートフォンからも24時間(メンテナンス時間を除く)利用できますので、従業員の方へのご案内に役立ちます。ただし、個人情報は入力しないこと、回答は一般的な説明であることが注意事項として示されています。個別の判断に迷う場合は当事務所にご相談ください。
Q. 国税庁の年調ソフトを使っている場合はどうなりますか
国税庁の年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)は、令和8年分の正式版が10月1日に公開されました。年調ソフトを使えば、給与の収入金額や配偶者の情報などを入力して申告書を作成できます。電子化の進め方は 年末調整の電子化の記事 をご覧ください。
詳しく知りたい方は(国税庁公式リソース)
- 簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)(PDF)
- 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
- 年末調整がよくわかるページ(令和8年分)
- チャットボット(ふたば)に質問する
- 年末調整手続の電子化に向けた取組について
本記事は令和8年(2026年)10月時点の国税庁ホームページの記載に基づいています。
出典:国税庁ホームページ(上記各ページ)
最後に
簡易な申告書は、従業員の方の記入の手間を減らせる一方で、勤務先側には前年の申告書を確実に管理しておくことが求められます。どの従業員に使ってもらうか、異動の有無をどう確認するかは、会社ごとの運用によって異なります。年末調整の事務でお困りの際は、当事務所の 経理サポート・決算 にてお手伝いできますので、 お問い合わせ よりお気軽にご相談ください。