こんにちは。10月も下旬に入りましたが、日中は汗ばむような夏日がまだ続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。
税務調査と聞くと、調査官が会社に来て帳簿や請求書の束をめくる場面を思い浮かべる方が多いと思います。ところが最近は、調査官が会社に来る前に、会計ソフトなどの帳簿データを提出してほしいと依頼されることがあります。
国税庁は令和8年(2026年)10月、この取組の考え方をまとめたページと「税務調査等における帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A」を公表しました。今回は、中小企業や個人事業主の皆様が実際に依頼を受けたときに慌てないよう、その要点をご案内いたします。
1. 実地の調査の前に帳簿データの提出が依頼されます
税務署の職員が事業所などに出向いて行う調査を「実地の調査」といいます。国税庁は、実地の調査に先立って帳簿等データ(パソコンなどに保存している帳簿書類の電子データ)を提出してもらう取組を進めています。
- 依頼の時期:原則として、調査の日時などを知らせる「事前通知」の後に依頼されます
- 事前通知より前の依頼:調査日の日程調整に時間がかかる場合などは、事前通知の前に依頼されることもあります
- 依頼の範囲:調査に必要な範囲に限り、どのデータかを確認したうえで依頼するとされています
- 実地の調査を予定しない調査:この場合も提出を依頼されることがあり、確認の結果、問題がなければ調査終了が口頭で伝えられます
国税庁は、これまで実地の調査の後に行っていた確認作業の一部を事前に税務署で済ませることで、調査期間や立会いの時間が短くなることが期待できると説明しています。
2. 依頼に応じない場合の扱い
Q&Aでは、正当な理由なく提出の依頼に応じない場合は、国税通則法の罰則規定の対象となりうるとしています。ただし、応じないことだけをもって罰則が適用されるものではなく、強権的に提出を求めることはないとも明記されています。あくまで納税者の理解と協力のもと、承諾を得て実施する取組という位置づけです。
セキュリティが心配なので紙で出したい、という声に対しては、データの方が分析・検証をスムーズに進められるとして、可能な限りデータでの提出に協力してほしいとしています。
3. 提出したデータの扱いが説明されるようになりました
令和8年7月以降に行う税務調査では、帳簿等データの提出を依頼する際に、国税当局でのデータの取扱いを説明する取組が始まっています。説明文書を渡すか、その内容を口頭で説明するとされており、主な内容は次のとおりです。
- データの受領・管理・消去の方法
- 国税当局の情報セキュリティ体制
- 国税職員の守秘義務違反に対する罰則
提出したデータは行政文書として保存され、例えば課税処分の証拠として保存が必要なものは、通常7年の保存期間が満了した後に消去されます。なお、提出したデータは、他の税務調査や行政指導に活用されることがあるとも説明されています。
4. メールやWeb会議でのやり取りもあります
国税庁は、インターネットメール、Web会議システム(Microsoft Teams)、オンラインストレージサービス(PrimeDrive)を税務調査などで利用しています。これらは税務署等の担当者と利用者の双方が合意した場合に限って利用され、合意がなければ使われません。
利用を始めるときは、担当者が電話または対面でテストメールの受信を確認する手順を踏みます。担当者が使うメールアドレスのドメインは「nta.go.jp」のみです。国税庁をかたる不審なメールも確認されていますので、心当たりのない連絡でデータの提出を求められた場合は、すぐに応じず所轄の税務署や当事務所にご確認ください。
よくある質問
Q. Teamsでの面談は「実地の調査」になりますか
Q&Aでは、実際に事業所などへ出向くものではないため、基本的には実地の調査に該当しないとしています。面談中の画面共有で帳簿を示すことはできますが、チャットや録音・録画、文字起こし機能の利用は守秘義務の観点から控えるよう求められています。担当者に身分証明書の提示を求めれば、カメラで示してもらえます。
Q. データを事前に出した後で修正申告をすると、加算税は重くなりますか
Q&Aでは、実地の調査前にデータを提出したことだけをもって、加算税の割合が重くなる「更正を予知してされた」修正申告に当たるわけではないとしています。ただし、実際の適用は個々の事実関係によって判断されます。
詳しく知りたい方は(国税庁公式リソース)
- 税務調査等における帳簿等データの提出依頼に関する取組等について
- 税務調査等における帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A(令和8年10月)(PDF)
- 税務調査等において納税者等の皆様から提出を受けた帳簿等データの取扱いについて(PDF)
- 税務行政におけるオンラインツールの利用について
- 不審なメールや電話にご注意ください
本記事は令和8年(2026年)10月時点の国税庁ホームページの記載に基づいています。
出典:国税庁ホームページ(上記各ページ)
最後に
帳簿データを事前に提出する場合は、どのデータをどの範囲で出すかを落ち着いて確認することが大切です。会計ソフトのデータがすぐに取り出せる状態か、日頃から確かめておくと安心です。税務調査の連絡を受けた際の対応や、提出するデータの範囲の判断は事業者ごとの事情により異なりますので、当事務所の 税務顧問 にて税務調査への対応を含めてサポートいたします。 お問い合わせ よりお気軽にご相談ください。